野呂英作「綾紬」 ー その毛糸の魅力を知り尽くす

男物の武骨なセーターをザクザク編みたくてこの毛糸を選びました。仕上がりはウール100%らしく高級な風合いがあり、ポツポツとカラフルな差し色が一面に広がっていて、さり気なくおしゃれな雰囲気の一着になりました。この野呂英作の「綾紬」の魅力を、心ゆくまでレビューしていきましょう。

模様編みで編みこむのも深みが出て男らしい一着になるけれど、毛糸の面白さだけでセーターの表情を作ってみるのもまた楽しそうです。野呂英作の「綾紬」の茶色を手に取ったとき、その毛糸の風合いのよさと色彩の微妙な移り変わり具合に、編み上がった時にはたしてどんな編地が表れるのだろうかと、何とも言えないワクワク感が心にあふれるのでした。

野呂「綾紬」はどんな毛糸?

野呂英作の綾紬の毛糸玉
野呂英作「綾紬」の毛糸玉とラベル

野呂「綾紬」の魅力と言えば、ウール100%の上質な風合いと、色や太さの気まぐれな変化。そして、毛糸の表面をうっすらと覆う微細な毛の繊維。この微細な繊維が編地の表情に優しさと深い奥行きを与えるようです。

この野呂「綾紬」を詳しく知るために、まずはラベルの記載内容に従ってこの毛糸の基本仕様を確認していきましょう。下表をご覧ください。

品名綾紬
色番Col.82
ロットLot.A
組成毛:100%
重量100g
長さ160m
参考使用針10-12号
標準ゲージ13-15目, 20-22段(10cm四方)
メーカー株式会社 野呂英作
野呂英作「綾紬」の基本仕様

まず色番についてですが、この毛糸のカラーバリエーションはユザワヤさんのネットショップを確認すると7種類ほどあるようです。今回のレビューではCol.82の茶色を選びました。

そして組成ですが、この毛糸はウール100%です。外観に落ち着いた高級感があり、質感については、やや張りのある硬めの毛糸といった感触です。

標準ゲージは13-15目x20-22段としてあります。毛糸の太さを実測してみると約1mm~約5mmと大きな幅があり、このように極端に太かったり細かったりするのが、この毛糸の特徴と言えるでしょう。

野呂英作の綾紬の毛糸の拡大写真。毛糸の太さに大きな幅がある。
野呂「綾紬」の毛糸の太さには大きな幅がある。

また、野呂の毛糸に共通して言えることですが、この毛糸は単糸で、撚りの方向はZ撚りです。

次に、洗濯表示を見てみましょう。

野呂「綾紬」の洗濯表示

野呂「綾紬」の洗濯表示には、●洗濯禁止、●漂白剤使用禁止、●タンブル乾燥禁止、●日陰の平干し、●上限110℃のアイロン可、●石油系溶剤による弱いドライクリーニング可、●ウェットクリーニング(特殊な水洗いと仕上げまでを行う洗濯処理)禁止、と表記されています。

野呂「綾紬」を実際に編んでみた印象

毛糸玉から毛糸を引き出しながら、野呂「綾紬」の魅力をじっくり観察していきましょう。まず目に留まるのが、毛糸の色彩の豊かさ。ベースとなる茶色の毛糸の中に、差し色として深い色合いの毛糸が小さくランダムに紡がれていて、贅沢な印象を与えます。白い毛糸が割と多く紡がれていることにも気づきます。

毛糸を触ってみた印象ですが、やや腰のある硬さを感じます。表面は若干ゴワついた感じがして、滑りのなめらかさは少な目ですが、チクチクするというものではありません。

毛糸の表面をさらによく見てみましょう。

野呂「綾紬」の編地の拡大写真
野呂「綾紬」の編地をさらに拡大してみる

このように拡大して見ると、縮れた毛の繊維が毛糸の表面を覆っていることが分かります。このような縮れた繊維の綾が、この野呂「綾紬」の毛糸の表情に深みを与えていると言えるでしょう。

毛糸の太さにはかなり変化があって、撚りの強さも場所によって強弱がありますが、全体的には撚りは弱めです。

毛糸を両手で引っ張ると、撚りの弱いところでは比較的軽い力でも切れることがあります。

では、野呂「綾紬」の編地の表情を見てみましょう。2種類のゲージでスワッチを編んでみました。

野呂英作の綾紬(茶色)のスワッチ。ゲージは15目x23段。
野呂「綾紬」Col.82(茶色)のスワッチ。ゲージは15目x23段(10cmx10cm)。
野呂英作の綾紬(茶色)のスワッチ。ゲージは13目x19段。
野呂「綾紬」Col.82(茶色)のスワッチ。ゲージは13目x19段(10cmx10cm)。

ベース色の茶色は単調な一色ではなく、濃い茶色から薄茶色まで幅広いグラデーションになっています。ほとんど白に近いベージュ色の部分も多くあることに気づきます。そしてよく見れば見るほど浮かび上がってくるのが、赤や緑など色とりどりの毛糸の部分。編み目ひとつ分ほどの差し色がポツポツと散りばめられています。このさり気ない色彩の豊かさが、この野呂「綾紬」ご自慢のおしゃれさとなっていると言えるでしょう。

編み目の表面は、前述したように細く縮れた繊維がふんわり覆っていて、色の深みや暖かさを演出しています。

野呂「綾紬」(茶色)のスワッチ。細く縮れた繊維が編地をふんわりと包み込む。

気になる汚れや傷は見当たりません。

この毛糸は摩擦には強い方ではなく、強くこすると表面の細かな繊維が浮き上がって毛羽立ってきます。

編地を曲げたときの柔軟性に関しては、柔らかいとも硬いとも言えず、中程度の柔らかさであると言えます。

野呂「綾紬」を使用した作品

野呂「綾紬」を使用したカーディガン

野呂英作の「綾紬」「茶色(Col.82)」を使用して、メンズのカーディガンを編んでみました。毛糸の美しいグラデーションがよく見えるように、メリヤス編みを基調としたデザインにしました。

野呂「綾紬」で編んだたカーディガン
野呂「綾紬」で編んだたカーディガン
野呂「綾紬」で編んだたカーディガン
野呂「綾紬」で編んだたカーディガン

茶系の渋い色合いで男らしさを演出しつつ、細かな差し色がさり気ないおしゃれさを印象付けているのではないでしょうか。

野呂「綾紬」の購入方法

野呂英作の「綾紬」はユザワヤさんとのコラボレーション商品のため、ユザワヤさんでしか購入することができません。全国のユザワヤさんの店頭や、ユザワヤさんのオンラインショップでご確認してみてください。